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Storyboard Pro使用事例 映画「君の名は。」

Storyboard Proを活用したコンテ制作 作品の設計図を描く

新海 誠監督新海 誠監督

本作における挑戦のひとつにビデオコンテがある。初めて使用したというStoryboard Proの手応えなどと共に、作品の設計図ともいえるコンテ制作について紹介しよう。

TEXT_佐藤平夥  ■主な使用ツール Storyboard Pro

 

新海誠(しんかい・まこと)
1973年、長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、個人制作の短編「ほしのこえ」でデビュー。以降、『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』を劇場公開。2012年、内閣官房国家戦略室より「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」として感謝状を受賞。2013年に公開の『言の葉の庭』では、ドイツのシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭にて長編アニメーション部門グランプリを受賞。2016年『君の名は。』公開、次世代の監督として国内外で高い評価と支持を受けている。

 

107分の時間軸をコントロールする コンテ制作での挑戦

新海監督が力を入れたという工程に、作品の設計図となるコンテ制作がある。そのコンテについて新海監督は「とにかく良い映画にしたいという気持ちで、毎日15時間くらいひたすら描きました」と話しており、並々ならぬ気概で描かれていたようだった。それは、本作の技術的なテーマがコンテによる時間軸のコントロールだったからだという。

「コンテを描くときには、どんな観客向けかとか、観客をここでワクワクさせたいとか、ここで考えさせたいとか、ここで感動させたいとか、ここで笑わせたいとか……様々な状況をシミュレーションしながら描くわけですが、制作者はやはり客観的な観客の気持ちにはなれません。しかもアニメーションという表現方法は、実写よりもカットの切り替えのテンポが速く、いろいろな情報を圧縮して密度を高め、抽象化しながら本質を伝えられるので、作中で多くの出来事を意図的に起こすことができます。だからこそコントロールが難しく、僕はこれまで観客と映画との距離や理解するタイミングのコントロールが制作途中でわからなくなることもありました。やがて時間軸をコントロールするためには、紙の上で考えるのではなく、実際に時間軸をつくるべきだと思いいたったのです。そこで、本作では最初からビデオコンテで進めようと決め、ビデオコンテに最適なソフトを探した結果、Storyboard Proを使ってみることにしました」(新海監督)。

もっとも、新海監督はこれまでも絵コンテとビデオコンテを並行して制作しており、それが新海監督の特色のひとつでもあった。今回新しくStoryboard Proを使用した理由は、これまでの手法では描いたものが直接時間軸にならないことに煩わしさを感じていたからだという。「今まではPhotoshopで絵を描き、After Effects(以下、AE)で読み込んでカットを配置し、Auditionで音声を付けて……と3つのソフトを行き来しなければなりませんでした。しかも、せっかくビデオコンテをつくっても、これを紙のコンテに起こす作業にかなり手間がかかるため、『言の葉の庭』ではそれだけで1ヶ月もかかってしまったのです。あまりにも不毛で、何とかならないかとずっと考えていました」(新海監督)。

 

『言の葉の庭』のコンテ作業

[A]Photoshopで描かれた絵コンテ。「『言の葉の庭』は約46分という短尺だったので、その分コンテもカラフルに描いています」(新海監督)

言の葉の庭言の葉の庭 ©Makoto Shinkai/ CoMix Wave Films

[B]AEによるビデオコンテ制作の作業画面。同作では3つのソフトを行き来してビデオコンテを制作した。Photoshopのタイムラインはあまり使い勝手が良くなく、使用を断念したという。「ビデオコンテにこだわればこだわるほど細かなタイミングを伝える必要が出てきて、それを文字に起こしてアニメーターに伝える作業も大変でしたね」(新海監督)。コンテに関しては「映画『星を追う子ども』(2011)では全て手描きにするなど、これまでもいろいろ試しています」(伊藤耕一郎プロデューサー)と、試行錯誤を重ねてきたという

言の葉の庭言の葉の庭 ©Makoto Shinkai/ CoMix Wave Films

 

『君の名は。』で用いられたStoryboard Pro

君の名は。君の名は。 ©2016「君の名は。」製作委員会

君の名は。君の名は。 ©2016「君の名は。」製作委員会

君の名は。君の名は。 ©2016「君の名は。」製作委員会

[C][D]タイムライン/[E]シーンの整理画面。 Storyboard Proはコンテ画、タイムライン、BGM、SE、演技プラン(Action Notes)、セリフ(Dialog)などをひとつの画面で表示でき、カット内容や前後のながれを把握しやすい。絵コンテをメインにした表示に切り替えることも可能で、利便性も高い。本作では利用しなかったそうだが、3D空間も使用できる点は、3Dとも相性が良く表現の幅も広がるだろう。

描画はフルカラーで描けるが、本作では「作業スピードの点から、黒・青・オレンジの3色に抑えました。色絵筆のイメージで、カスタマイズしたオリジナルの鉛筆ブラシを使用しています」(新海監督)とのこと。

新海監督は、音やリズムで魅せる演出を意識しており、足音や水の音、風鈴、虫の声、遠くの祭囃子など細かいSEのトラックを作成し、音も含めた時間軸のコントロールに役立てている。一方で紙への出力時にフォントが選べないなどの未熟な部分もあり、特にムービーファイルが読み込めないことは「『言の葉の庭』では動画を撮ってコンテにしたカットも一部あったので、改善されると良いなと思います」と新海監督。全体的な使用感は良かったそうで、時間軸のコントロールには欠かせないソフトだったという。

 

この記事は月刊誌CGWORLD + digital video 218号(2016年9月10日発売)に掲載された記事です。

 
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