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三洋電機株式会社

Users' Cases EDAファーム構築ソリューション
インタラクティブ/バッチジョブを統合したEDAファームを構築。急増していたハードウェア投資を抑制、TAT短縮により10%〜45%のEDAツールコスト削減効果。

三洋電機株式会社

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三洋電機株式会社 三洋電機株式会社
コンポーネント企業グループ セミコンダクターカンパニー
「環境」、「CS」、「ネットワーク」をコンセプトに事業展開。蓄積したアナログ技術をデジタル分野に活かし、先進的なエレクトロニクス機器や半導体製品を生み出し続けている。

所在地:群馬県邑楽郡大泉町坂田1-1-1
従業員:12,700人(2004年3月現在、連結)
事業内容:AV、通信、パソコンなどの民生エレクトロニクス機器用半導体製品の開発・生産・販売、その他半導体関連事業


SOC化に伴う計算処理量の増大、開発期間のさらなる短縮、品種ごとの採算性の確保・・・
これからの半導体設計における最適な開発環境とは?


大幅かつ急激に増加するハードウェア投資への不安、投資が本当に有効活用されているのかという疑問。セミコンダクターカンパニーLSIビジネスユニットにおけるハードウェア/ネットワーク環境の計画・構築・運用管理を一手に担うCADインフラ課で芽生えた危機感への取り組みが、2003年秋、EDAファームとして結実した。これにより、システムLSI設計環境でのマシン増設の抑止、インタラクティブツール用EWSの削減と目覚しい成果があがる一方、ジョブTAT短縮によるEDAツールのコストダウン効果、ジョブ待ち時間の低減、1人当たりのジョブ投入数制限の撤廃など、設計効率化においても大きな成果をあげている。

■EDAファーム構築前の問題点


丹野氏
―― 半導体分野では、短納期化・高機能化・低電力化など、顧客からの厳しい要求を実現すべく、激しい開発競争が繰り広げられている。開発現場においては、設計の大規模化・微細化に伴い、合成、シミュレーション、レイアウト工程の計算負荷が級数的に増大。さらに、それぞれのEDAツールが複雑化し、必要とされるリソースが膨らむ中で、新しい考え方にもとづいた設計環境の変革が求められている。
日岐氏:1990年代後半を境にマシン増設のための投資額が著しく増加しました。バッチ系のツールでは以前からLSFによる負荷分散環境を構築していましたが、インタラクティブ系については、それぞれのツール専用にマシンを配置していました。ツール間でマシンを使いまわすことはありませんので、各ツールでの負荷ピーク時にあわせて台数を揃えなければなりません。どんどんハードウェアを増設している割に稼働率はバラつきがあり、本当にこのまま投資を続けていって良いのかという不安や疑問がありました。

福田氏:インタラクティブ系ツールは、使いたいツールが稼働するマシンのどれかを設計者が選択し、直接ログインしていました。ログイン時に混み具合を調べることはありませんので、特定のマシンが混んでいて他は空いている状況が生まれていました。それでも、混んでいるマシンで作業している設計者にはマシン不足とうつるため、ツール管理担当者に増設要求が入っていました。

丹野氏:開発品の種類を増やし新しいジャンルにいち早く取り組んでいかなければなりませんし、マーケットの変化に素早く対応しなければなりません。そのためには、今までと同じやり方でリソースを増やし続けるわけにいかないのは明らかでした。EDAファームは本当に必要に迫られて構築したわけですが、今までとは違った切り口で設計環境を改革しなければならないと考えてきた結果でもあるのです。

日岐氏:リソース全体の稼働状況の監視もファーム構築の目的でした。以前は自作や汎用のツールを使っていましたが、ライセンスやCPUの使用量など、項目ごとの監視にとどまっていました。今回、項目間の関連性や、指定した期間での集計が簡単にできる仕組みを構築することで、システムチューニングやプランニングに活用できるようにしようと考えました。


■EDAファーム構築に向けて


日岐氏
―― 2002年夏、EDAファーム構築に向けてCADインフラ課が始動。各社のソリューションを詳細に検討した結果、ダイキンCOMTECのEDAファームソリューションが採用された。
日岐氏:当時グリッド技術が注目されていたこともあり、グリッドコンピューティングのソリューションをいろいろ調査・検討しました。ダイキン工業以外のソリューションは、EDA環境に適用するためにかなりカスタマイズが必要だったのですが、ダイキン工業のソリューションは、EDAツールに必要なスクリプトが揃っているなど、EDAに特化していて、我々にとって最適なソリューションだと判断しました。

福田氏:他のソリューションはワークロード管理ソフトを導入してハードウェアを統合するレベルなのに対して、ダイキン工業のソリューションには、EDAに特化したノウハウと設計環境全体の稼働状況を取得し診断できる仕組みがありました。
―― ファーム構築を開始するにあたり、設計環境の現状把握と問題点の抽出を行うために、2003年3月に稼働診断を実施。診断レポートでは問題解決方法と効果予測も提示された。
日岐氏:診断結果は予想通りの内容でした。LSFを適用しているバッチジョブ用のクラスタは性能が高くないマシンで構成しており高負荷状態。最新の高性能マシンは主にインタラクティブ系のツール用途に導入しており、稼働率が100%近くから数%と、著しいバラつき。しかも全体としてはCPU稼働率がかなり低い、という状況でした。これがデータで裏付けられ、ツール担当者をはじめとした関係者全員に認識させることができたことは大きな成果でした。
―― ダイキン工業は、バッチジョブ/インタラクティブジョブで必要とされるハードウェア性能がほとんど変わらない点に着目し、バッチジョブ/インタラクティブジョブの混在実行、さらに負荷の変動するインタラクティブジョブ用に一定のリソース割り当てを保証する制御機構を立案。これにより、CPU処理量50%向上、バッチ系ツールの実行時間短縮15%以上、インタラクティブジョブのレスポンス低下抑制等の予想効果を提示した。この診断結果を受け、EDAファーム構築が具体的に進むことになった。だが、各ツールに割当てられているマシンをEDAファームで共有化することに、ツール担当者の反対はなかったのだろうか?
丹野氏:それまで知らなかった実態が見え、EDAファーム構築のメリットを実感してもらえましたので、ハードウェアの一元化についてはまったく反対はありませんでした。以前は各ツール担当者からあがってくるマシン増設要求を調整する過程で不公平感が生まれていましたが、ファーム構築後はCADインフラ課が主導してハードウェアリソースを配分できるので、不公平感を解消することもできます。

福田氏 日岐氏:診断によりマシン全体での稼働率が低いことはデータで裏付けられましたが、マシン間でのバラつきが有りましたので、稼働率を平準化することで、全員が恩恵を受けることを理解してもらえました。ただ、『今使っている大規模メモリ搭載マシンをEDAファーム稼働後も優先的に使いたい』、『必要なスペックを満たすマシンが必ず割当てられるようにして欲しい』というような懸案事項がいくつか出たため、それらをファーム構築に反映することになりました。
―― ツール担当者の懸念を抑えるために、EDAファーム構築当初は、特定ツールが優先して使用できるリソースのグループがいくつか設定された。しかし、このグループ設定は稼働後まもなく解除されることになる。
福田氏:EDAファーム移行後の稼働状況をモニタリングした結果、特定ツールに優先的に割当てたリソースの稼働率が低いことが判明しましたので、まもなく設定を解除しました。同時に、CPUの割り当てが効率的にできるということがツール担当者にも認識してもらえることができました。

■EDAファームシステム概念図
EDAファームシステム概念図


■導入効果について


―― EDAファーム構築後半年を経た2004年3月、6ヶ月間の稼働状況を集計し、効果測定を行うために、再度稼働診断が実施された。CPUリソースを追加することなく50%の処理量を向上、EDAツールのTAT短縮により、10%〜45%のツールコストダウン効果、開発ピーク時のインタラクティブジョブ性能が2倍以上に向上など、ほぼ予想通りの効果を上げていることが実証された。
日岐氏:EDAファーム構築によりハードウェア投資額は5年程前の水準に戻っています。CPUに50%の余裕が生まれましたので、CPU数は現状を維持し、今後はリプレースでCPUの性能向上を図っていきます。これまではCPU数が足りないということで質より量を優先した投資を行ってきましたが、EDAファームを構築することで、より高性能なCPUに大規模なメモリを搭載するというように、質を優先した投資に切替えることができました。これにより、投資カーブを抑えることができるほか、設置スペースや保守費用、維持管理工数の抑制も行えます。ハードウェアの投資抑制だけでも、EDAファーム構築の費用対効果は大変高いといえます。

日岐氏:インタラクティブジョブも自分のPCから実行できるようになりましたので、グラフィックスが必要なCADツール用として使っていたインタラクティブツール専用EWSの削減が可能となってきました。レンタル更新をしないことで順次削減していきます。今期中にもかなりのマシンが削減できる見込みです。また、設計者は違うフロアのEWSまで移動して作業する手間が省けますので、作業効率も向上しています。

日岐氏:開発ピーク時に例年のようにリソースを追加しなくても、性能が維持できました。バッチジョブのTATは確実に速くなっているのが実感できます。また、従来あった一人当たりの同時ジョブ投入数の制限を撤廃できましたので、パラメータを変えたシミュレーションを何本も実行でき、設計品質向上にも寄与できていると思います。


■EDAファーム構築までの流れ
EDAファーム構築までの流れ

■EDAファーム構築による効果
EDAファーム構築による効果

■EDAファーム構築前後でのサーバーCPU稼働率の比較
−PSManagerで取得したデータをもとに作成−

EDAファーム構築前 EDAファーム構築後

■リソース全体のワークロードとTAT性能の推移
−eVaTheseによる性能測定結果−

リソース全体のワークロードとTAT性能の推移
■VerilogXL性能・ライセンス数の推移
(構築前後で同等の計算量期間を比較)
−eVaTheseによる性能測定結果−

VerilogXL性能・ライセンス数の推移


■運用状況について


日岐氏:設計者は自分のPCからログインサーバーにログインします。ログイン後はCADツールのシェルを起動して設計作業が行えます。ログインサーバーではLSFクライアントが稼働していますので、CADツール起動時点で最適なマシンが自動的に選択されます。こういう仕組みはバッチジョブしかできないと思っていたのですが、グラフィックを使うインタラクティブ系のEDAツールでも同様の仕組みを構築することができました。これにより、ジョブの種類を問わない一元的な作業環境が構築できました。

福田氏:仕組みとしては変わりましたが、設計者の操作手順はほとんど変わっていませんので、EDAファームへの移行はスムーズにいきました。
―― CADインフラ課では、環境改善だけでなく、設計リソースの利用集計や利用効率改善、障害対策を目的としたソリューションを導入し、少人数ながら多岐にわたる運用管理を効率的に実施している。
福田氏:リソース稼働監視ソフトウェアPSManagerでディスク使用状況の監視を行っています。ディスクには、開発機種ごとにディレクトリと使用期間を決めており、それを超える時には延長申請をしてもらっています。長期間アクセスしていないデータをチェックし、延長申請時に整理するように依頼しています。今後は、使用頻度が低いデータの削除を喚起することで、ムダなディスク使用を抑制していきたいと考えています。

福田氏:また、ネットワーク統合管理アプライアンスPNDDAで、ネットワークの構成管理や性能管理を行っています。ネットワークの物理構成や稼動状態が自動更新され、必要なレポートが即座に取り出せます。見たいデータに加工し直す手間がいらないのが圧倒的に便利です。インタラクティブツールもEDAファームに組み込んだことで、グラフィックデータのやりとりによるトラフィック増加が今後予想されますが、PNDDAでボトルネックを把握し、対処していきます。

日岐氏:ネットワークや機器に障害が発生した場合、今まではユーザーから連絡が入ってから対応していたのですが、今はユーザーから言われる前に障害を検知して、前倒しで対応することができます。


■今後の展望


日岐氏:現在はシステムLSI設計が主のサブビジネスユニットでの展開ですが、これを他のサブビジネスユニットにも展開していきます。EDAファーム環境がしっかりできていますので、それほど負担なく展開できるものと見込んでいます。

丹野氏:今後半年から1年でLSIビジネスユニットに全面展開し、ほぼすべてのマシンをEDAファームに組み込むまで持っていきたいですね。

日岐氏:我々の目標は、誰がどこでログインしても同じツール環境を使えるようにすること。そのためにはサブビジネスユニットの垣根を無くさなくてはなりません。これはEDAリソースだけの問題ではなく、設計手法、運用方法等も異なりますのでなかなか難しい問題ですが、実現に向けて努力して行きたいと考えています。
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