MS Modelingの導入により、機械や電気出身の学生にもビジュアル的に理解しやすい環境を整備。
短期間で習得できる操作性で、卒業論文や修士論文にも活用。
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長岡技術科学大学 生物系 高分子機能工学研究室
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高分子機能工学研究室では、天然高分子とその誘導体を対象として,生体の機能を模倣した新規材料の開発と、その基礎を研究している。コンピュータを用いることで、実際の実験ではできないことをシミュレーションしている。
【研究内容】
・ステロイド系誘導体の合成と分子凝集構造に関する研究
それ自体で液晶になったり有機溶媒をゲル化させる誘導体をつくり、分子構造と凝集構造との相関を調べる。
・種々の多糖誘導体が形成するナノ構造の研究
多糖誘導体をフィルムにし、その表面形状を調べる。
・多糖誘導体の分子動力学シミュレーション
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所在地 |
:〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603−1 |
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Webサイト |
:http://www.nagaokaut.ac.jp/ |
生物系には、入学者の8割が化学、電気、機械など様々な分野を専攻した高等専門学校出身の学生が集まる。
高分子機能工学研究室では、MS Modelingを導入することで、機械や電気出身の学生にもビジュアル的に理解しやすい環境を整た。
短期間で習得できる操作性で、卒業論文や修士論文にも活用されている。
高分子機能工学研究室では、学生が「Materials Studio Modeling(以下、MS Modeling)」を研究に活用し、卒業論文や修士論文に結びつけている。その研究内容、運用状況について、木村 悟隆 助教授に伺った。
■学科の授業にコンピュータケミストリを導入
「学生は1学年50人いますが、その内1年生は10人くらいです。残りの40人は、高等専門学校で、既に何かしらの専門を学んできた学生が編入してきます。40人の約半分は化学系の物質工学科出身で,有機分子やバイオテクノロジーを学んで来ています。残りの20人は電気や機械、土木であったりします。」
「3年生に入った当初の学生実験では、足並みを揃えるという事で、50名を半分に分けます。半分は溶液調製や、pHメーターの使い方などの基本的な実験操作の練習をします。そして、もう半分はコンピュータです。コンピュータを扱うことが得意な学生には、分子をコンピュータで取り扱うことは非常にマッチしているようです。」
「今までの有機化学の授業は、ある物質を作るための化学反応を机上で図的に理解する、という反応中心が殆どでした。しかし、バイオや材料分野では、有機分子の立体構造や物性を理解する方がより重要です。私の講義では、先ず分子模型で炭化水素やアミノ酸を組み立てます。そこで初めて、分子が立体的な形をしていて、また分子毎に形が異なることに学生は気がつきます。その上で、学生実験にて、コンピュータで分子を扱うと、今度は結合長や分子の安定な形が数量的に評価出来ることを知ります。実際には見えない分子を、"手に取り"、"触る"のに、大学教育ではコンピュータは欠かせません。学生も大変面白がり、「この分子模型、何処で買えますか?」「このソフト、貰えませんか」(無償のものを利用)といった質問が沢山出ます。」
■MS Modelingでガラス転移温度(Tg)の変化をシミュレーション
「私自身は、ドクターコースのころからInsight IIなど計算ソフトを使っていました。その頃は、合成高分子のモデルになる低分子を実験で扱っていました。長岡技科大に赴任後、こちらの研究室は生物系ということもあり、セルロースのブレンド等を扱う実験的研究をしていました。再び計算の世界に戻ってきたのは5年前です。」
「MS Modelingを使うきっかけは、同じ研究室の鈴木教授が、ビニル高分子のガラス転移温度(Tg)を調べていたということがあります。高分子のアモルファス状態を計算できるのは、MS Modelingだけでしたので、導入を決めました。研究対象は基本的にコポリマーで、二種類の繰り返し単位からなるものですが、その配列がどういう順番で繋がっているのか、どういう繰り返し方によってガラス転移温度(Tg)が変わってくるか理論による予測を、実験で検証し、何れの理論がより妥当であるか調べていました。」
「アモルファス状態での分子形態や分子運動を実験的には知るのは難しいこともあり、そこをコンピュータシミュレーションを用いることで予測しようとしました。計算では、二つの繰り返し単位がランダムに並ぶ場合と、交互に並ぶ場合について行いましたが、ガラス転移温度(Tg)の変化は、いままでの実験で得た結果と合致する傾向にあります。」
「結果としては、コポリマーの配列とガラス転移温度(Tg)の関係を計算で出すこと自体、そんなに簡単ではなさそうだと感じました。現実の系は数億という原子が入っていて非常に大きなものですが、計算で扱う系は、一般的に多くてもそのうちの数千です。現実の非常に大きな系では、どのように詰まっていても、極小的な構造や非晶は平均化され、全体的に常に同じような温度履歴なら、ガラス転移温度(Tg)は同じになるはずです。しかし、計算では、小さな部分構造の繰り返しで考えるため、どうも非晶のそれぞれのキャラクターが反映されてしまうようです。」
「ガラス転移温度(Tg)は、体積で見る場合と分子運動で見る場合があります。ガラス転移温度(Tg)以下では分子運動が凍結されるので、計算では運動の方で見ることも出来ます。実験的には体積と温度で見るのが一番確かであると言われてます。」
「計算における非晶は、系が非常に小さいので、小さい揺らぎに対しても体積が変わります。実際の系は非常に大きいので、局所的に伸縮しても打ち消しあって大体一定の値になり、計算ほど揺らがないと思われます。計算では、温度が低いと体積の変動があまり起こらず大体同じ値となり、温度の高い方がかえって値がばらつきます。温度が高いとゆっくりした揺らぎがあり、短い時間範囲で見ると本来の体積に対応していないのです。これは、扱う系が小さいために起こる計算特有の問題です。」
「従って、出てきた結果をどのように評価するかということが重要になってきます。初期構造だけでなく、各原子に与える初速度によっても、いろいろな可能性があります。時には非常に時間をかけて計算しなければなりません。ケース別に計算をたくさんやらなければならなくなると、CPUパワーが非常にシビアな問題になります。」
「ソフトウェアはWindowsの使いやすさもありますし、パッケージ化されているので、何かしらの結果は、コンピュータのスキルがそれ程無くても出せます。ガラス転移では、温度を段階的に下げていきますが、この部分は基本設定ではなく、スクリプトを書き加えるなど工夫して計算しています。」
■研究室でのMS Modeling
「研究室に導入したのは1年前です。昨年9月の導入トレーニングに、研究室の学生二人が出ました。スクリプトの使い方もこの説明でよく分かり、その後の研究の進行に非常に役立ちました。その後、中越地震による中断もあったものの、ほんの数ヶ月で卒論・修論に結びつけることが出来ました。」
「昨年は、ホモポリマーとコポリマーの二つについて研究しています。ホモポリマーでは、ポリオキシメチレンの非晶領域の分子動力学シミュレーションです。ポリオキシンメチレンは、非常に硬いエンジニアリングプラスチックです。例えば、プラスチック歯車として非常によく使われています。金属よりも硬いのと油がいりません。自己潤滑性があるということで、精密部品では金属よりむしろいいのです。このポリマーでは、ガラス転移温度(Tg)以上でも分子運動が凍結されている領域があると言われていますが、先ずは実験と比較できるようなガラス転移温度(Tg)の値が得られるか調べてみました。もうひとつは、ビニルコポリマーのガラス転移温度です。」
「うまく使えれば比較的短期間に一応の値は出せます。そこからが問題ですね。計算時間が掛かるので、卒論・修論では何回も同じような試行をしていないのです。アモルファスと言っても、シミュレーションで扱うような小さな系では、その構造は様々なので、初期構造を変えて、何回も計算を繰り返しその結果を平均するといった工夫が今後必要ではないかと思っています。」
「ガラス転移挙動の評価法としては、各原子の二乗平均変位のカーブを解析し、緩和時間を出すというのもあります。ガラス転移温度(Tg)より十分高いところでは、分子の位置はどんどん動いています。ガラス転移温度(Tg)以下では、分子は局所的に振動するだけなので、自ずと各原子の動ける距離が決まってくるので、曲線が寝るわけです。このカーブをもっと厳密に解析すると、このような運動の緩和時間が分かります。」
「今のところ計算の問題点を洗い出し、精度のよいガラス転移温度(Tg)の評価法を確立することを考えています。計算と実験の結果が合ったら、今度はポリマーの側鎖の運動を評価したいと思います。」
卒論・修論テーマ

(修)セルロース誘導体の表面構造解析
(修)セロビオースオクトアセテートの分子動力学シミュレーション
(修)ポリオキシメチレンの非晶領域の分子動力学シミュレーション
(修)低分子ゲル化剤の構造解析
(卒)ビニルコポリマーのガラス転移温度
(卒)低分子ゲル化剤の構造解析
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■将来展望
「このような研究結果を最終的にどこへもっていくかですが、ひとつは、ガラス転移温度(Tg)そのものを分子設計で制御することがあります。また、計算で非晶状態を正確にとらえられれば、気体透過など機能性の研究に活かすこともできます。」
「ポリマーの非晶について、実験で得られる情報には限りがあります。X線構造解析では、結晶のような原子の位置は決まりません。分子の形態は、溶液中に近いと言われています。しかし、なぜこのポリマーは酸素の透過性がいいのか、吸湿性がいいのか、調整条件がどうして変わるのか、そのようなことを非晶の構造から知りたいときがあります。そこで、Materials Studioのようなソフトが必要なのです。」
「今までポリマーを箱に詰める研究は、主としてやわらかい高分子が対象とされてきました。アクセルリスのモジュールamorphus cellも、こうした系を前提に開発されたと思われます。当研究室で扱っているものの一つは、セルロース誘導体です。分子が非常に長くなれば、少しはやわらかさがでてきますが、20オングストローム、30オングストロームという小さな世界では、むしろ棒に近い硬い分子です。こちらの方は、今、応用が広がっています。代表的なものは、セルローストリアセテートです。もともと写真フィルムのベースとしてつくられていましたが、今はその技術が液晶ディスプレイに使われています。写真フィルムより市場規模も大きくなり、工場もどんどん増えています。」
「セルロース誘導体の結晶の構造は、以前に比べて大分明らかになってきました。わからないのは、こういうものの非晶部です。分子鎖に沿って、短距離では非常に硬いものが、長距離的には、糸鞠状になっている部分があるはずです。非晶部は、吸湿や酸素透過であったり、他にもいろんな機能に大きく関わっていると思われます。ですが、それを実験で詳細に調べた人はいませんし、計算で箱に詰めることの出来た人もいません。そこを研究したいですね。」
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