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品質管理のあるべき姿

~組織の情報処理能力を高め活性化する~

品質管理のあるべき姿

公開日:2022年8月3日

品質領域のマネジメントは、関与する人や組織が多岐にわたり、品質向上の実現にはこれら情報の体系的な管理と活用が鍵となります。本記事では、工程管理に着目して情報の側面から品質管理のあるべき姿を考えます。

1. 品質管理とは?基本的な考え方

品質管理とは、企業が提供する製品やサービスを顧客に受け入れられる状態にするために、組織活動をマネジメントすることです。品質とは、顧客のニーズや期待を満たす企業活動全体の特性であり、製品といった有形物やサービスといった無形物によって得る、顧客知覚といえます。管理という言葉は、目標に向かって組織活動を進めることで、QMS(Quality Management System)を適切に制御(control)することで実現します。

前回記事で触れたように品質管理は狭義の品質保証業務で、多くの企業は品質管理部門がその任務を担い、検査・是正・品質報告・再発防止などのTQM活動があります。例えば、生産部門と協業して不良を起こさないための作業手順・管理基準の作成、3S・5Sと呼ばれる現場改善、調達や出荷部門と協業した部品・原材料の受入検査や出荷検査の管理、品質手法の教育とTQCの推進など、品質問題の発生を最前線で防ぎます。

近年、非常に残念なことですが、検査データ改ざんや検査方法不備といった品質領域の不祥事がメディアに散見されます。品質管理活動には大きな工数やコストが掛かるために、「少しぐらい」の手抜きや偽装が発覚しなければ、組織の甘えが生じ不正が常態化します。品質管理領域のコンプライアンス管理も、QMSの重要な構成要素で、厳格なマネジメントが必要です。

2. 品質管理の難しさ

品質管理は、現状の把握、目標の設定、原因分析、対策立案/実施、効果の確認、歯止め/標準化、といったサイクルを回すことが必要で、定期的なトップ診断や教育による方針管理や理念の浸透が、この活動の基盤を支えます。しかし、次に挙げるような品質領域の特徴が、品質管理を難しくしています。まず、品質業務が関与する組織や個人は、顧客に寄り添う営業部門に始まり、技術や調達及び製造部門と広範囲に渡ります。モノづくりの過程は、企画・設計・DR・工程設計・初期流動管理と、長く複雑なプロセスが存在します。また、製造・販売の協力企業や原材料調達といった外部との関係も大切で、近年のグローバル化でその複雑性が高まっています。

企業活動は、多くの組織や人の複雑な結合で構成されます。経営学では企業組織をコンピュータに例え複雑なシステムとして把握し、組織能力が議論されてきました。システムが最大のパフォーマンスを発揮するのは、構成要素間で情報を正確に早く伝える情報管理と、構成要素における情報生成や変換の効率が鍵といえます。品質領域の仕事を、このような情報の視点(品質システム)として把握し、あるべき姿と改善ポイントを考えてみます。

3. 品質管理でおさえるべきポイント

モノづくりプロセス全体で品質管理を考える場合、①設計段階での品質管理、②製造段階での品質管理の二つに区分できます。設計段階では、製造時に想定されるバラツキを考慮して目標品質や性能及び顧客要求を確実に担保するロバスト設計が必要で、製造や調達部門との協業で実現されます。また、製品が使用される多種の環境を考慮し、製品機能の劣化・寿命・故障を抑制する品質工学を駆使した設計が必要で、市場の品質情報の活用が期待されます。これら設計段階の品質管理の取り組みは、この後に予定している設計開発編で議論することとして、今回は製造段階での品質管理に着目して議論します。

製造段階では、不良を発生させない(発生防止)、不良を次工程や顧客に届けない(流出防止)の二つが品質管理の基本で、工程管理・品質検証・品質改善の三つの区分で考えることができます。

工程管理は、各工程の社内標準に準拠した作業手順や検査手順の作成、教育による標準や手順の確実な実行、各工程で使用する工具・治具・設備・検査具の保全及び検定、などの仕事です。品質検証は、部品や原材料の受入検査・各工程の検査・最終品の検査などの流出防止、品質教育や各工程の管理状況の監視、などの仕事です。品質改善は、不良を発生させない未然防止のための改善、発生した不良に学び再発を防止する改善、などを様々な部門や工場横断で実施する仕事です。

製造プロセスは、化学製品や食品に代表されるプラント型製造と、自動車や家電に代表される組立型製造に大別できます。前者は人間の介在は少なく機械装置の制御が中心ですが、後者は多品種混合生産を人間の能力で実現している部分が多く、情報管理の課題を多く抱えています。組立型製造企業をイメージして、三つの管理で情報管理の課題が多いと考える工程管理に注目して、品質領域の仕事を情報の視点で考慮する品質システムの高度化を考えます。

4. 工程管理の重要ポイント

初めに、製造工程が保持すべき品質管理体系について考えると、前回記事で述べた、ISO9000認証に支えられたQMSの構築が重要です。品質保証体系図といった全体システムは、製造を管理する品質計画書やQC工程表というサブシステム、製造品質に関わる要領・規定・手順書などの体系により構成されます。

とりわけQC工程表は、製造プロセスを構成する様々な工程の順番・各工程の作業方法と手順・目標時間・品質検査手順及び基準、などを定め、品質管理の要といえます。QC工程表は二つの標準書、技術標準及び作業標準に準拠して作成することで、工場及び全社で統一した工程管理が実現できます。技術標準とは、技術的検証に基づき各作業がなぜこのようにするかの根拠を示し、作業標準は各作業をどのようにしておこなうかの指針を示します。この二つの標準は、各企業のコア技術を蓄積して管理する非常に重要な情報であり、新技術採用や新商品の経験蓄積で常に改正され、グローバル規模で自社の強みを生かす武器となります。QC工程表を中心に、全ての活動指示と結果が把握され、多種の規定や標準類が連携して更新される工程管理体系が、理想の品質システムといえます。

5. QC工程表のシステム化

QC工程表の役割は、技術標準と作業標準に準拠して手順と管理項目を規定し、それを確実に実践させる事です。例えばジョブショップ型のバッチ生産の場合、各作業者は製造指図・QC工程表から作成された、作業手順書・製造数指示書を毎朝紙資料で受け取り、夕方の作業完了時にその結果を記入して管理する方法が一般的でした。しかしこの方法は、連続生産による多品種混合生産には不向きで、タイムリーな生産状況や品質の可視化もできません。そもそも、手書き書類による管理のために、管理項目や手順の変更対応や、各工程作業の標準化といった全体統合や改善には力不足です。

近年、QC工程表の電子化が進み、作業者の傍らに設置された液晶モニターやタブレット端末に、作業手順・検査項目・注意事項などを表示し、計測器やバーコード等を組み合わせ完了確認や検査結果を取込む電子管理が進んでいます。ここで注目すべきは、各工程の作業手順・検査手順・検査基準・検査結果を四点セットで電子的に管理して、トレサビリティを高めることです。もし品質不良が生じた時、どのような作業手順でどのような水準の結果になったかを検証することで、QC工程表の作業手順や検査基準の改正が進みます。

また、各作業者の教育訓練記録や保有資格の情報、部品・原材料の受入検査記録なども連関して閲覧できれば、品質改善効果が高まります。各工程の作業指示・作業数・検査結果の電子管理が進むと、MES(Manufacturing Execution System)を活用して工場全体の情報統合が可能となり、生産管理の水準が高まります。

(図1)QC工程表と工程情報の管理

(図1)QC工程表と工程情報の管理

最後に考えたいのは、様々な努力で統合した情報の活用です。グラフ機能による環境整備はタイムリーな品質監視能力を高めます。更に、BIツール(Business Intelligence Tool)による階層的情報管理を加えることで、ドリルダウン機能によるデータの掘り下げと詳細確認を可能とし、品質問題の真因探索と対策に有効です。このように、多種で大量の情報統合が進むことで、将来AIなどの分析技術を活用し、多変量情報を組み合わせた品質予兆管理の可能性が高まります。

6. 品質管理業務の改革事例

ここではダイキン工業のITを活用してQMSの改革を推進した成功事例を紹介します。

コニカミノルタ株式会社
品質デジタライゼーションによる状況の見える化と活用
Digital Quality Assuranceの実践

この記事のまとめ

  • 品質管理とは、企業が提供する製品やサービスを顧客に受け入れられる状態にするために、組織活動をマネジメントすること、またその改善サイクルを機能させることである。品質業務の関与する範囲は社内の各部門、顧客、サプライヤーと多岐にわたり、その複雑性と難易度は高まる一方である。人海戦術に限界が見え始めた今、品質領域の仕事を情報の視点で捉え直した品質システムの高度化が求められる。
  • 製造段階の品質管理は、発生防止と流出防止を目的に、工程管理・品質検証・品質改善に区分でき、品質の要といえる工程管理では、QC工程表を中心に全ての活動指示と結果が把握して、多種の規程や標準類が連携して更新される管理体系が理想といえる。
  • 品質システムの高度化が目指す先は、多種大量の情報を統合・分析し、予兆管理や再発防止・人材育成といった組織能力向上に活かすことである。その実現の一歩として、工程管理に関わる情報の体系的管理と見える化が有効である。

【参考文献】
飯塚悦功(2009)『シリーズ<現代の品質管理>現代品質管理総論』朝倉書店。
二宮慶三(2005)『超ISO企業実践シリーズ9,製造段階での品質問題を減らしたい』日本規格協会。

岡山商科大学経営学部特任教授 國學院大學経済学部兼任講師 門脇一彦 氏

門脇一彦 氏
岡山商科大学経営学部特任教授
國學院大學経済学部兼任講師

1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。ダイキン工業株式会社で空調機開発及び業務改革を実践後、2015年より電子システム事業部でITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。

 

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