ページの本文へ

製造業向けIT
  1. 製造業向けIT
  2. 導入事例
  3. 日本パルスモーター株式会社

IATF16949に準拠した開発プロセス改革と情報基盤構築を一体で実行

日本パルスモーター株式会社

日本パルスモーター株式会社

自動車分野への展開を機に、IATF16949に準拠した開発プロセス改革と情報基盤構築を一体で実行し、全社的な品質管理レベルの底上げを図る。問題の早期発見と対策スピードアップにも効果。

以下は一部抜粋です。記事全文と運用イメージはこちら!

日本パルスモーターは、事業の新たな柱とすべく、自動車分野への展開を開始。これを機に、IATF16949に準拠した開発プロセス改革を推進している。同社は、電機/機械、アミューズメント、半導体等、幅広い分野で事業展開しているが、品質要求が最も厳しい自動車分野を社内標準とすることで、全社的な品質管理レベルの底上げを図る狙いだ。今回の事例では、同社における開発プロセス改革と、その情報基盤となっているSpaceFinderの活用状況をご紹介する。

導入・構築の経緯

ISO9001、そしてIATF16949へ。相次ぐ開発プロセス改革に対応し、情報基盤をフレキシブルに発展

平山 良裕 氏

取締役 モーションコントロール事業本部長
平山 良裕 氏

平山氏当社は2000年にISO9001認証を取得し開発業務に適用していたのですが、運用の徹底という点で課題がありました。また、「せっかく蓄積した資料を有効活用したい」、「開発がどこまで進んでいるのか、他部門から見えにくい」という声も強くなっていました。

例えば、市場クレームが発生した場合に、開発の検証記録が素早く出てこなかったり、デザインレビュー(DR)を条件付で承認したのに、その追跡が曖昧になっていたという。

平山氏問題解決のためには、開発ステップに沿って必要な成果物を確実に作成し、すべて完了してから次工程に移行するといった開発プロセス管理が必要だと考えました。そこで、2013年9月にSpaceFinderを導入し、開発プロセスの進捗管理とDR管理、成果物管理に適用したのです。文書管理システムや帳票管理システムも検討したのですが、SpaceFinderは我々が考えていた仕組みを実現でき、しかも、費用負担なく自分たちで改修できる点が大きな魅力でした。

2014年5月にSpaceFinderの運用をスタート。しかし、それも束の間で、2015年7月にはシステム仕様の見直しが開始された。自動車分野への事業展開を機に、IATF16949(当時ISO/TS16949 ※以下、TSと記載)に準拠した開発プロセス改革が全社規模で始まったのだ。

平山氏近年、お客様の分野を問わず、品質管理への要求レベルが高くなっています。そこで、最も厳しい自動車分野で求められるTS対応を社内標準とすることで、品質管理レベルの全般的な底上げを図ることになったのです。また、ISO9001とTSのダブルスタンダードになることを避ける狙いもありました。そこで、部門横断のTS推進プロジェクトを立ち上げ、業務の見直しに着手。部門毎に異なっていた開発プロセスを共通化し、TSに準拠するプロセスに合わせこんでいきました。各部門には、これまでのやり方に対するこだわりがありましたので、理屈では納得しても『意識の統一』までもっていくには、それなりに時間がかかりました。

TS推進プロジェクトと並行してシステム仕様の検討を行い、2016年1月に構築を開始。改修が柔軟に行えるSpaceFinderの特長を活かし、同年9月にTS版の運用が開始された。

運用状況

IATF16949に準拠しつつ、案件に応じて管理レベルを切替。プロセスの徹底とスピードアップにも効果

日本パルスモーターでは、新規開発品、既存製品のカスタマイズ対応で年間300件あまりの開発案件が発生。それらはCSRや法規対応、案件規模、設計基準への適合度等によってAPQP管理の要否が判定され、管理対象の場合はSpaceFinderに登録される。
佐久間 謙輔 氏

モーションコントロール事業本部
第二システム部
佐久間 謙輔 氏

佐久間氏氏本社、テクノセンター、岩木工場の3拠点で、経営層と設計、製造、営業、品証部門の80名がSpaceFinderを利用。TS対応により、利用部門が拡大しています。帳票作成や改修は私1名が兼務で担当しています。新規の案件は『開発案件管理シート』を起票し、企画動機や収益モデル、自社の強み・ノウハウ、想定される問題・リスク、経費予測、収益計画等を記載して開発申請を行います。

TS版では開発申請段階での情報インプットが強化され、開発承認の的確な判断とエビデンスの蓄積が行われる。情報が不十分な場合は試作レベルで止めて市場の反応を見るといった動きも可能だ。

平山氏開発案件は、①自動車産業向け製品、②一般開発製品、③当社ブランドで販売する外製品という3つのグレードに分類。すべての案件で共通した開発プロセスを適用しつつ、グレードに応じて管理レベルを切り替えています。開発申請が承認されると、管理責任者および営業、開発、製造、品証のメンバーから成るAPQPチームを編成し、承認フローを回します。

チーム編成が承認されると、企画から製品設計、工程設計、量産試作までの開発プロセスが、『成果物管理シート』『DR管理シート』を連携して進められる。企画は営業、製品設計は開発が主担当だが、各プロセスの終了承認はAPQPチーム全員の合意が必要。作成すべきPPAP資料や各DRの必須レビュアーの担当と役割も明確化され、システムに反映されている。

課題管理と情報活用の仕組み

佐久間氏氏DRで指摘された課題と対策、期限管理を『Problem History Chart(PHC)』で行っています。課題数、完了数、未了数、期日超過数、完了率が自動集計され、期日を超過するとアラートメールが管理責任者に配信されます。設計変更にはフラグを立て、設計が順調に進んでいる目安として変更回数を確認できるようにしています。

PHCには課題・対策や変更履歴が集約され、量産移行までにAPQPチームによる承認が必要。製品リリース後の変更内容を記録することも検討している。

平山氏PHCは、類似開発の際に、過去の開発経緯や技術課題と対策を確認することにも活用できます。DRの指摘事項以外に、開発過程での試行錯誤や決断したことなども書き込んでもらうことで、前任者の悩みや失敗、気づきも共有できるようにしています。今後は、類似開発でのDRのインプット情報としてPHCを活用することも考えています。

経営層や関連部門からの指摘が増え、問題の早期発見・対策スピードアップにつながっている

様々な検索条件を見やすく一覧化し、ワンクリックで検索できる『検索ボード』も新たに設置。シンプルでわかりやすい操作性で経営層や関連部門の活用も進み、問題の早期発見や対策スピードアップに効果が現れている。

平山氏開発の滞留状況や成果物の内容が、簡単に目視で確認できるようになりました。実際に、「この開発は何故こうなっているのか?」、「承認依頼が来ているこの案件は、自分がイメージした内容と違う」というような意見が社長や役員会から出てきています。また、「この検証結果は本当にこれでいいのか?」というような問い合わせが、DRを開催する前に入るようになっています。

エビデンスをおさえて開発プロセスを回していくことで、「遅延や開発の手戻り削減に効果が現れています。さらに、これだけ綺麗にまとまっているので、外部監査やお客様への説明の際も非常に便利です」と平山氏は語る。

開発遅延防止の取り組み

ここまで、TS対応で強化されたポイントを中心にご紹介してきた。次に、SpaceFinder導入当初からの課題である開発遅延防止における、日本パルスモーター流の管理手法をご紹介しよう。

平山氏『開発案件管理シート』には、工数や治具製作費等の費目別の経費予測を記載しています。一方、重要案件については、経費と工数の実績値を基幹システムから週次で出力し、消化率を算出。これをSpaceFinderで管理している開発進捗とつき合わせて進捗グラフを作成しています。開発は進んでいないのに工数や経費の消化率が進んでいる場合は、何か課題があるはず。この情報を部長職以上で共有化し、状況把握や対策を行っています。ほぼリアルタイムで開発の動きが見えるようになり、アクションが早く出てくるようになりました。

このような管理を続けることで、開発効率化や遅延防止のポイントも見えてきた。

平山氏例えば、試作を行う場合、部材や部品手配の待ち時間が必ず生じます。その間の行動計画が立てられているかチェックすることもポイントの一つ。他の案件を進めるとか、同じ案件の中で別の設計を行うなどですね。また、進捗が遅れている場合、その原因を早く把握することです。人手が足りないのであれば部門内で調整を行う。技術的な壁が担当者やその部署で解決できないのであれば、他部署からメンバー集めて対策を打たなければなりません。

「開発過程で壁に突き当たることはありますが、そこで抱え込まれては困ります。もちろん悩むことで成長する部分もあるので、どのぐらいが適切かは判断が難しい点ですね」と平山氏は語る。

佐久間氏ISOで求められている教育訓練計画と実施状況、実施結果の管理を効果的に行うために、『教育訓練管理シート』を新たに作成しました。当社では個人毎にスキルマップを作成しており、その中から半期毎に実施する項目と期限をこのシートに登録します。その後、実施結果や報告書等のアウトプットを登録し、上長が目標レベルに到達したかどうかを判定して承認するという流れです。

お客さまプロフィール
日本パルスモーター株式会社
本社 東京都文京区本郷2-16-13
資本金 1億円
従業員 193名
事業内容 1952年の設立以来、「動かす」そして「制御する」ことをテーマに、様々な産業分野に高品質な製品を提供。流体制御や医療技術、産業機械や半導体、アミューズメント、防衛/宇宙等の、高精度が求められる最先端分野に事業を展開。各種モータと制御系システムを組み合わせた多彩なモーションコントロールを実現し、顧客の多様なニーズにワンストップで対応している。
日本パルスモーター株式会社 テクノセンター

テクノセンター

  • 記載されている製品名、会社名は各社の商標もしくは登録商標です。

お問い合わせ

メールマガジン登録

「ダイキン 製造業向けITソリューションNEWS」
イベント情報やものづくりブログなどお客様に役立つ情報をお届けします。

ページの先頭へ