従来は、大規模モデルは計算にかかるコストが高すぎて、第一原理計算では研究することができませんでした。その結果、ハードウェアとソフトウェアの制限により、研究者は妥協した判断を余儀なくされていました。量子力学的な結果を得るために現実的ではない小さいモデルを使用するか、現実的なサイズのモデルではあるが近似計算しか行えない、かのいずれかを判断する必要がありました。
ONETEPを使用した第一原理量子力学計算の代表的な適用例には、以下の研究があります。
下図で示す例のように、ONETEPの主要な利点はそのリニアスケーリング性です。すなわち、全エネルギーの計算に必要な時間が、原子数に関してリニアに増加します。リニアスケーリング法は従来のDFTに比べて格段に進歩を遂げています。従来の方法では、計算に必要な時間はN3 (Nは原子の合計数)に比例して増加します。 ONETEPは、超並列コンピュータ(プロセッサを何百台まで拡大)でも非常に効率的に実行できます。結果的に、Materials StudioのONETEPモジュールを使用すると、非常に大規模な系(数千原子系)のDFT計算を行うことができます。
ポリエチレン オキシド(PEO)ポリマー鎖の合計エネルギ計算での、ONETEPのリニアスケーリング性。16台のデュアルコア 2.8 GHz プロセッサ(1 MB キャッシュ、プロセッサあたり8 GB)で計算を実行しました。
ONETEPでは電子密度の局在性を利用しているため、絶縁体または半導体のシミュレーションに主要な用途があります。大きな単位格子を適切に記述することが必要な非晶質ガラス面やゼオライトにもONETEPが最適です。
ONETEPは触媒の分野にも適用されます。触媒作用の坦持体の影響を調査するために使用できます。アクティブなナノクラスタと一緒に坦持体をモデル化するには、何百、何千もの原子が必要です。このため、計算に量子力学的作用を考慮したい場合、ONETEPなどのリニアスケーリングDFTコードが必須です。
ONETEPは、ナノテクノロジーのモデリングの分野で新しい可能を開きます。例えば、センサーに応用するためのカーボン ナノチューブの電子状態研究に使用できます。特にバイオセンサーの開発に応用できます。多くの場合、バイオセンサーは、金属ナノワイヤーとそれに付着する抗体で構成されます。これらの抗体は特定の蛋白質を選択します。蛋白質の反応性を理解するには量子力学的計算が必要であり、大規模な系であるためにリニアスケーリング コードが必須です。
ONETEPでは重要な工業用途の材料の電子状態を解明することもできます。例えば、図2で示すシリコンのスーパーセルの例のように、ONETEPでは欠陥、破砕、およびドーパントをモデル化することができます。これらの材料の特性をより理解すると、最終製品の性能の向上に寄与することができます。実験に加えてこの種のモデリングを行うと、実験単独より低コストで成果を挙げる事が実証されました。
ONETEPは密度行列法に基づいたDFTを実装しています。密度行列は絶縁体に指数関数的に局在化された量であり、その対角線要素は電子電荷密度に等しくなります。密度行列の要素が空間的に局在化されているため、分子軌道が分子全体に非局在化された従来のDFTプログラムに比べて、ONETEPでは小サイズの対角化計算を数多く実行します。
1000の原子を含むシリコンのスーパーセルの最高被占軌道(右)および最低空軌道(左)。このような大きな構造を調べる機能は、低濃度で欠陥、破砕、およびドーパントをモデル化する上で重要です。
ONETEPでは密度行列は非直交一般化 Wannier関数(NGWF)という、局在化関数の基本セットで表現されます。この関数にはメリットが2点あります。初めに、NGWFの数を増やして精度の高い完全な基本セットを簡単に提供することができます。次にNGWFはかなり局在化できるため、可能な限り計算作業を減らすことができます。線形スケーリングは、NGWFの局在性の直接の帰結です。
Materials StudioのONETEPモジュールを使用すると、DFTを利用して大規模系で第一原理量子力学計算を実行できます。現在ONETEPでは、以下の異なる3つの計算を行えます。
これらの各計算では、指定された化学および物理特性(特に以下の特性)が得られるように、設定することができます。
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