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製造業DXの本質とは?変革に向けた課題と必要な取り組みを解説

公開日:2022年8月23日

現在、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれています。特に製造業では、人材不足、サービスビジネスへのシフト、デジタルを用いて新たに市場に参入する新興企業の台頭など、自社のビジネスに影響を与えるさまざまな外的・内的要因を抱えていることから、DXは無視できないテーマです。製造業にとってDXは何を意味するのか。実際にDXをどのように捉えて改革に進めて行けばよいのか、進むべき道筋を考えます。

1. DXと製造業の関係性

経産省が提唱するDXの定義

昨今では多くの業界でDXの必要性が叫ばれています。DXはもともと経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」をきっかけに広く世の中に普及したキーワードであり、同レポートの中で経産省はDXを次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

DXが必要になる背景には、近年の市場環境の変化が関係しています。テクノロジーの進化によって社会や生活、経済活動が高度化、複雑化するとともに、市場の動きも早くなっています。新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の事態も相まって、新たな生活様式や社会活動に追随するための事業変革が企業に求められています。

そこでは、必然的にITシステムの変化が求められます。経産省もレポートの中で「これまで長年にわたり使用してきたITシステムを新しい時代に合わせて刷新しなければ、企業の経済的負担が増大し、かつ生産性の低下により競争力が低下し、その結果として日本に深刻な経済損失が起こり得る」と警鐘を鳴らしています。

製造業におけるDXの現状

DXはいまや業種を問わず多くの企業に求められており、製造業もその例外ではありません。経済産業省、厚生労働省、文部科学省が発行する「ものづくり白書」でも製造業がニューノーマルな時代の企業競争を勝ち抜くために、DXの取り組みに着手する重要性を説いています。

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「DX白書(2021)」では、各業界へDXの取組状況を調査しています。その中で製造業は、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した割合(20.1%)が、5業界中で4位に位置しています。さらに国外に目を向けると、同回答は米国の製造業の回答(44.1%)の半分程度の数値しかありません。

DXへの取組状況(業種別) 
DXへの取組状況(業種別)
出典:独立行政法人 情報処理推進機構「DX白書(2021)」

日本の製造業は、過去から現在に至るまでその高い品質が評価され、自動車業界を始めとするさまざまな分野の製造業がグローバル市場で高いシェアを誇ってきました。しかし、近年では少子高齢化の影響も相まってますます人材不足が懸念されており、これまで行ってきた業務のやり方を時代に合わせて刷新していかなければなりません。

その根拠の1つが日本企業の労働生産性の現状です。公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」によると、2019年の日本の製造業の労働生産性はOECD平均を下回っており、その順位もOECD加盟国主要31カ国中18位という低い水準にとどまっているのです。より少ない労働力で業務の成果を上げることが求められているといえます。

製造業DXの本質とは

では、製造業が目指すべきDXの姿とはどのようなものでしょうか。デジタル技術との関係性の観点では、製造業はDXが叫ばれる以前から、ドイツ政府が国を挙げて提唱する「Industry4.0」や第四次産業革命といったキーワードが注目されていたように、データや最新技術を用いた高度な自動化を目指す動きが高まっていました。こうした工場の姿はスマートファクトリーとも呼ばれています。

そのため、製造業のDXというと、スマートファクトリーを構成する主要な技術であるAI(人工知能)やIoT、デジタルツインなどの最先端技術が活用され、無人化された工場などのイメージを抱く方も少なくはないでしょう。

しかし、それらだけがDXであるとは限りません。そもそもDXとはあくまで企業を競争優位に導くための業務およびビジネス変革を実現するための手段です。自社が目指す変革は、必ずしもAIやIoTなどの最新技術だけで成し遂げるものではありません。

特に製造業は、設計から生産に至るエンジニアリングチェーンやサプライチェーンなど、事業に影響を与えるさまざまな要因が複雑に絡み合っており、企業における課題も百社百様です。そこで重要なのは、DXが何かであるという細かい定義を考えることではなく、「経営課題を正しく捉え、それを解決に導く施策をデジタル技術で実現していくこと」です。

2. 製造業DXの成功例

国内における製造業DXの成功例も、必ずしもAIやIoT、スマートファクトリー、デジタルツインなど高度な技術や大規模なシステムを取り入れることでもたらされたものではありません。そのアプローチはさまざまです。中には比較的シンプルで現場が理解しやすい考え方で進められ、それによって大きなインパクトをもたらしているものもあります。ここでは企業ごとの事例をいくつかピックアップします。

簡易な自作IoTが会社を変えた部品メーカー

愛知県のある部品メーカーでは、最初はほんの小さなIoTシステムへの投資から大きな業務改革を成し遂げています。この会社が最初に構築したのは、安価なセンサーを設備に取り付けて生産実績を簡易な画面にテキスト表示するだけのシステムでした。しかし、得られたデータをもとに課題の抽出と改善に向けたミーティングを重ねることで、最終的には年間数億円規模のコスト削減につながる業務改善を成し遂げたといいます。

さらにこのような成功体験から、自社開発したIoTシステムを外販するための事業を立ち上げています。まさに事業改革につながったDXの典型例ともいえますが、もともとはじめからDXを意識したわけではありませんでした。

同社では生産ラインを少ない人員で管理していたため、実績取得が困難だったといいます。そうした業務課題を「生産実績を自動で取得して解決したい」といった動機からIoT活用に踏み出しました。DXではデータ活用がカギを握ることが多く見られますが、同社の場合はデジタル化に向けて初めから難しいことを考えず「業務改善につながるデータは何か」を追求したことが大きな成果をもたらしたといいます。

データの標準化から地道に取り組んだ産業ロボットメーカー

ある大手産業ロボットメーカーは、経営方針としてDXのビジョンを示して取り組んでいるといいます。この会社の場合、取り組みは実は複雑なものではなく、考え方はシンプルで分かりやすいものでした。同社は、これまで拠点や子会社間でばらばらであったコードの統一やデータの標準化から地道に取り組みました。社長自らが指揮を執って全社員とコミュニケーションを取りながら、長期にわたる計画でステップを踏みながら、DXを推進したといいます。

ユーザー体験を切り口に改革に取り組む電子機器メーカー

製造業のDXは設計、生産などの分野で語られがちですが、「ユーザーを知る」という観点からマーケティングの改革に注力する製造業もあります。ある電子機器メーカーでは、市場環境が激しく競争が激化する中、製品の価値を高めるという観点のほかに、ユーザーの潜在的なニーズを把握することを重要な課題と捉えて改革を推進しています。そこではデジタル施策を統括する全社横断の部門を立ち上げるほか、顧客IDの統合、カスタマーデータプラットフォームの構築などからバリューチェーンの強化を進めているといいます。

3. 製造業DX実現のための課題

上記にて、いくつかの業務改革例を挙げましたが、もちろん、改革を実行するにあたり、それを妨げる多くの障壁があります。これは企業によって異なりますが、ここでは日本の企業にありがちな、主なDXの阻害要因や課題となる要因を挙げてみます。

現場力やカイゼンの文化が妨げに

製造業に限ったことではありませんが、過去の成功体験に縛られ、時代に合わせた変革ができないことは少なくありません。日本の製造業の地位を世界に冠たるものまで押し上げた要因の1つに、現場の強さが挙げられますが、それらがかえって負の影響をもたらすこともあります。

例えばデータを過信せずに「ベテランの経験と勘」こそが正しいという固定概念は人材不足の時代には大きな足かせとなってしまうでしょう。また多くの製造業の現場で行われてきた「カイゼン」にもリスクがあります。その効果はいまだに顕在ですが、チームや部署ごとの「個別最適」にとどまってしまう可能性も指摘されています。カイゼンで見直しを検討する作業内容は、エンジニアリングチェーン全体の視点で見た時に最適なものであるのか、そもそも既存の業務は必要なのかという抜本的な議論には発展しづらく、変革に直接結びつきにくいという弱点があります。

データ連携性に乏しい非柔軟な既存システム

製造業の中には、オフコンで稼働するレガシーな基幹系システムをいまだに抱えている例も見られます。多くの製造業が現場の効率性を重視し、現場業務に適合するように自社でスクラッチ開発を行ったり、パッケージ製品を過度にカスタマイズしたりしながら基幹システムを構築してきました。

しかし、カスタマイズやアドオンが過度に施されたシステムは、複雑化・ブラックボックス化しやすく、メンテナンスできる人材がいなくなれば、そのシステムを市場の変化に合わせて柔軟に対応することも困難になります。そもそも日本企業の多くは、既存の基幹システムの更新や維持・メンテナンスに人材やコストが割かれており、戦略的なデジタル化の取り組みに費やせるリソースが乏しいという現状もあります。

また、DXの取り組みでは社内に蓄積するデータをいかに活用できるか、特にこれまで連携が十分になされてこなかった販売、設計、製造といった各工程のシステムやデータ連携も大きな課題ですが、こうしたレガシーな基幹システムでは他のシステムと手軽に連携してデータ活用することが困難になっています。

人材不足と技能継承の課題

製造業の大きな課題は人材不足です。少子高齢化の時代を迎える今、多くの産業が人材不足に陥っているため、これは製造業に限った話ではありませんが、経済産業省「2021年版ものづくり白書」の調査では、全産業との比較でも、製造業の就業者全体に対する割合は2012年以降低下し続けているのが実情です。2002年時点で384万人であった若年就業者数(15 ~35歳)は、2020年には259万人となっており、製造業全体の就業人口の25%を切る水準にまで低下しています。

特に製造業の場合は、職人による匠の技やベテランの「経験と勘」などに依存し、業務ノウハウが個人に蓄積されているケースが少なくありません。そうしたベテラン人材が退職してしまうことで、技術の衰退が起こる可能性も十分に考えられます。

4. 製造業DX実現のポイント

上記に触れた課題を踏まえて製造業DXを推進するために、どのようなポイントに注意するべきなのでしょうか。ここでは以下の3つの観点を解説します。

トップからの強いコミットメント

DXは既存の業務改善の延長上ではなく、むしろ業務プロセスの抜本的な変化を伴うことがあります。まずはその認識をもつことが重要でしょう。しかしそこで課題となるのは、抜本的な改革には少なからず社内の抵抗が生まれてしまうことです。実際に、DXを推進したり大規模なITシステムの稟議を通そうとしたりするには「社内の根回しが必要」といった声が多く聞かれています。

だからこそDXの取り組みには、全体最適を見据えた上で経営トップによる強力な推進力・実行力が不可欠です。

2020年9月にマッキンゼーが発表した「デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ」の中でも、デジタルによる変革について「皆が納得する成功を収め、関係者の協力を得られる環境を作れるかどうかがDXの成否を握る」と主張しています。

現在では多くの企業で、「DX推進」の部門が誕生していますが、そうした部門がDXを社内で推進する際には、必ず抵抗勢力との調整が求められます。そうした層を説得するための後ろ盾として、まさに経営層の理解やコミットメントが欠かせないのです。

競争領域の理解とシステム戦略の明確化

ただ実体のない「DX」という言葉だけを経営層が発信しても大きな効果はないでしょう。先述したように、自社やさまざまな取引先とで構成されるエンジニアリングチェーンやサプライチェーンの中で、自社の課題を適切に捉え、そもそもDXの取り組みにおいて何が目的であるか(自社にとって何がDXの成功か)を示し、従業員に「納得感」を醸成しつつ取り組みを行えるかどうかが重要になるとも言えるでしょう。

そのためには、これからの時代に自社の武器になる差別化領域を正しく捉えた上でシステム戦略を明確化することが必要です。

また、過度なカスタマイズやアドオン開発による硬直した基幹システムが、変化への柔軟性を阻害する要因であることを先述しました。確かに昨今では、自社の業務をパッケージ製品の導入に合わせて見直し、刷新する動きも見られます。しかし、すべての業務をパッケージに合わせて標準化する必要はありません。

企業ごとに差別化できない領域はパッケージ製品ベースで業務標準化を行い、企業の強みとなる差別化領域には、やはりカスタマイズやアドオンをしてでもシステムを作り込む必要が出てくるでしょう。

このように、変革に向けたシステム投資の際には、新技術がもたらす目先の効果だけにとらわれず、明確なビジョンや戦略、方向性を描く必要があります。

デジタルに合わせた人材の育成・強化

先ほど、製造業では人材不足が深刻化している現状を指摘しました。これは現場の人材だけでなく、ITの知見を自ら活用して変革を起こす情報システム部門など、デジタル系の部署の人材についても同様です。

DXを実現するためには、社内でデジタル戦略を実行できる、いわゆる「内製開発」を実行できる人材がカギを握ります。この理由はコストや柔軟性です。これまで多くの日本企業は、システムインテグレーター(SIer)にシステム開発の多くを依存してきました。しかし業務や市場の変化にシステムを迅速かつ柔軟に対応させていくには、従来のSIerのみに依存した開発では納期やコストに限界が生じてしまいます。

もちろん、内製化に踏み出そうとしても、社内にプログラミングができる人材がいない、本業をやりながらでは到底取り組めないと思う企業も多いでしょう。確かに、ITエンジニアを採用して本格的なシステムを構築することは、これまでこの種の人材がいなかった組織にとっては難易度が高い取り組みです。そこで最近では、専門知識を必要とせず業務部門自身でシステム開発を行えるツールを用いて、業務改革を進めていく「市民開発」という言葉も誕生しています。

もちろん、市民開発だけで組織を抜本的に変革するシステム構築は困難かもしれませんが、デジタルを用いた業務改革のカルチャーを浸透させる上でも、いま注目が高まっているのです。

5. 製造業DXの実現に貢献するノーコードツール

専門のエンジニア不要で業務改革を推進

DX推進のために内製開発は大きな役割を担います。すでに述べたように、専門のエンジニアが開発した大規模かつ高度なシステムだけがDXにつながるわけでもありません。企業が解決するべき課題はさまざまです。現在では、プログラミングのスキル不要でアプリケーションを開発できる「ノーコード開発ツール」が市場に数多く流通しており、例えば業務部門がそうしたツールを用いて自身の業務を大幅に効率化するアプリケーションを構築するだけでも、企業によっては自社に大きなインパクトをもたらすことができるでしょう。

製造業の業務部門の日々の業務を見てみると、生産管理、販売管理、プロジェクト管理など自社のビジネスと深く関連した「コア業務」のほかに、作業日報や申請・承認といった重要性の低い「ノンコア業務」が存在します。ものづくりのコア業務は自社の競争力に直結する重要領域ですが、個社によって異なり、または定型化しづらいという特性があります。それによってデジタル化できず、Excelなどで管理しており、業務効率や情報活用に課題が生じるケースが見られます。

まさに、そうした業務のデジタル化に役立つのがノーコード開発ツールです。ダイキン工業でも、製造業に特化したノーコードアプリケーション開発基盤として「Smart Innovator」を、帳票・ワークフローの電子化を促進する業務改革パッケージとして「SpaceFinder」を提供しています。いずれもプログラミングの専門知識が不要で、製造現場の担当者自身で扱うことができます。

これらを活用することで、各部門それぞれの業務改善を実現するだけでなく、部門や拠点をまたがり、数多くのタスクと成果物を伴う広範囲な業務プロセスをデジタル化することもできます。

ノーコード開発ツールによる製造業の改革事例

ダイキン工業のSmart InnovatorやSpaceFinderは国内大手企業を含む多くの製造企業に採用されています。設計、製造、品質管理など活用範囲はさまざまであり、これまで紙や手作業、Excelなどに依存していた業務をアプリ化、デジタルワークフロー化して業務効率化や業務の標準化につなげることができます。

具体的には、日立製作所様や日立建機様、良品計画様、ヤンマー様、コニカミノルタ様などを含むさまざまな企業に採用されています。これらの企業を含む事例は以下のページで詳細に解説していますので、ぜひご覧ください。

6. まとめ

製造業DXを確実に実現するためには、DXやデジタル化の細かい定義にとらわれることなく、自社の課題や目標をしっかりと認識した上で、それに応じたデジタル技術が何であるのかを検討しながら、取り組みを進めていくことが重要です。そうした検討によってAIやIoTなどの最新技術が必要になることがあるかもしれません。あるいは、より手軽に導入できる別の技術が必要になることもあるでしょう。場合によっては現場主導でデジタル活用を推し進められるノーコード開発ツールやワークフローの導入だけでも大きなインパクトを得られるかもしれません。

そうした検討や試行錯誤を経ながら、やがて経済産業省が提言するところのDXへと近づいていけることでしょう。

ダイキン工業も日本の製造業の一員として、製造業の各企業が直面するDXの悩み解消を支援し共に高め合って、日本のものづくりの発展に貢献していきたいと考えています。

 

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