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システム内製化が進む理由│メリット・デメリットや取り組みのポイントを解説

公開日:2023年3月30日

デジタルトランスフォーメーション(DX)の機運が高まる現在、業務システムやアプリケーション開発の内製化の必要性を改めて考えるべき時が来ています。なぜ現在システム内製化が重要なのでしょうか。ここではシステム内製化の実態や実現のポイントを解説します。

1. システム内製化の概要と背景

システム内製化とは

システム内製化とは、業務やビジネスに必要なシステムやアプリケーションの開発を主に自社の人材で行うことです。日本企業では、これまでシステム開発を自社内で行う代わりに、外部のシステムインテグレーター(SIer)などに依頼する傾向が顕著に見られました。システム内製化とは、こうした外部の企業による開発の対になる考え方です。

ただし、一概に「内製化」と言っても、対象とする業務にも程度にも幅があります。例えば、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書(2020)」では、ITに関する業務をどの部門(部署)が担当しているかをまとめた調査結果を掲載しており、そこでは、社内システム開発から情報セキュリティ、データ分析の仕組みを始めとする10の業務項目に対して、「企画・設計など上流の内製化を進めている」「プログラミング工程を含めた全体工程の内製化を進めている」「(内製化を)進めていない」の3つのレベルで内製化の状況を示しています。

本稿では、特に言及しない限り、主に社内システムの開発に関してプログラミング工程を含めた全体工程の内製化について述べていきます。

システム内製化の状況

IPAの「DX白書(2021)」によると、内製化の状況は日米で大きく開きがあることがわかります。SoR(System of Record:データを管理するためのERP・基幹系システムなど、従来型のITシステム)における開発手段について尋ねたところ、内製による自社開発を「活用している」と回答した企業は、日本が31.2%でした。一方で米国は58%となっています。米国は「検討中」も含めると85%を超えるのに対して、日本は「検討中」と合わせても過半数に及びません。

同じように、攻めのITやDXにおいてより重要視されているSoE(System of Engagement:顧客や取引先との関係性を強化するためのシステム)の開発状況について尋ねたところ、内製による自社開発を「活用している」と回答した企業は、日本が19.3%だったのに対し、米国では60.2%でした。SoRと同様、日本は「検討中」を含めても過半数に達していません。

DXや開発ツールの進化が内製化を後押し

このように日本ではシステムを内製化する企業は少数派であり、長らく外部の企業にシステム開発を依頼し、開発できるエンジニアを自社内に配置しない傾向が強く見られました。しかし今、システムを一部内製化しようとする取り組みが進んでいるのです。

その背景にあるのがデジタルトランスフォーメーション(DX)です。外部委託ではシステムの構築や改修に時間を要してしまいます。しかしながら、近年では社会情勢や市場が急速に変化し、デジタルツールを用いた業務改革が求められています。こうした変化に対して素早く対応する上で内製開発が有効な手段の1つだと考えられています。

また、もう1つの背景は開発ツールの進化です。以前から「ノンプログラミング」「超高速開発」などの領域で製品が市場に存在していましたが、最近では「ノーコード開発」「ローコード開発」と呼ばれるアプリケーション開発を簡素化する技術が数多く登場しています。これにより、本格的なシステムでなければ、専門技術者や外部の企業に依頼することなく開発できるようになり、内製化の大きな後押しとなっています。

なお、「IT人材白書(2020)」によると、上流工程の内製化の高まりは、DX推進と相関関係があることが判明しています。DXに取り組んでいる企業は、「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が41.9%であり、一方でDXに取り組んでいない企業の場合、同項目は21.9%と低い数値となっています。

DXに取り組んでいる企業ほど内製化を進めている割合は大きい

DXに取り組んでいる企業ほど内製化を進めている割合は大きい
出典:独立行政法人 情報処理推進機構「IT人材白書(2020)」

2. システム内製化のメリット・デメリット

コスト、スピード、ノウハウ蓄積などがメリット

システム内製化のメリットの1つは、迅速性の向上です。システムを外部に委託していると、契約書の締結といった手続きなどに時間がかかるほか、スケジュールの制約があって着手までに時間がかかります。そして、外部委託先のエンジニアたちは必ずしも業務を熟知しているわけではないため、その分のコミュニケーションや手戻りで時間を要すこともあるでしょう。システムを内製化することによって、こうした外部委託のデメリットを取り払うこともできます。

またシステム内製化では、当然ながらSIerに支払っていたコストが不要になります。外部に依存していると、わずかな改修であっても思いのほか費用がかさんでしまうことがあります。想定外のコストを捻出することができないために、利用者からのニーズをシステムへタイムリーに反映できない場合もあります。

そのほかのメリットは、開発を通じてIT知識・ノウハウを蓄積できることです。自社にノウハウが貯まれば、社内のIT人材育成にもつながります。また内製開発ではなくシステムを外部委託する際も、開発人材が自社にいることで技術者の視点から外部の業者と同等の知識レベルで会話することもできるでしょう。

人材やIT統制のデメリットも

一方で、内製化にはデメリットや障壁も伴います。その最たるものが、技術力や人材の不足です。デジタル化の機運が高まる昨今では優秀なIT人材は引っ張りだこであり、簡単に採用はできません。そのためシステム内製化を決断したとしても、なかなか前に進まないことがあります。高い技術レベルを持つ人材がいなければ、その分、内製できる範囲にも限界があります。

また、特にスクラッチ開発による内製開発では、情報共有やドキュメント化を進めなければ構築したシステムの仕組みがブラックボックス化するリスクもはらんでいます。特定の人にしかわからないような属人化された開発・運用体制の場合、担当者の退職時にリスクが高まり、外部にその改修を依頼した際に高額の費用がかかることがあります。

もう1つ懸念されるのがIT統制です。ノーコード開発ツールなどを用いれば、ITの専門知識が少ない業務部門が独自にアプリケーション開発を行えるようになるメリットがありますが、IT部門の管理下に置かれず、セキュリティやガバナンスに問題があるシステムが乱立する可能性もあります。

3. システム内製化を成功させるポイント

システム内製化は数多くのメリットがあるものの、その取り組みにあたり事前に押さえておきたいポイントがあります。主なものを以下に紹介します。

内製化の効果が高い業務を見極めて順次進める

内製化において重要なのは優先順位です。システム内製化の対象となる業務が複数ある中で高い効果が得られるものを正しく見極めて着手し、素早く成果を出すことがカギとなります。DXを成功させるという観点からも「小さく始めて早く効果を出す」という考えは重要な1つです。まずスモールスタートで成功体験が得られれば社内に対する説得材料ができ、システム内製化やDXに対する賛同者・協力者を巻き込み、段階的かつスムーズに業務範囲を拡大することができます。

トップダウンのアプローチ

組織のトップやリーダー層が内製化の意義を理解し、人材配置も含めた必要な施策をトップが打ち出したりメッセージを発信したりする必要があります。トップが発言することによって変革に取り組む「本気度」が伝わりますし、推進する担当者としては大きな後ろ盾を得て進めやすくなります。また、現場の社員がシステム構築に協力しやすい雰囲気を醸成するのにも有効です。

部門ごとに業務改革キーマンを置く

大企業が複数の部門で全社的に内製化を進める際の注意点として、部門ごとに必ず業務改革の中心人物を配置するようにします。この際、業務改革キーマンは業務を深く理解している人が担当するべきです。部門内で現業も行いつつ、その人が中心となりながらデジタル化を推進していくことが望ましいでしょう。

部門ごとにバラバラの取り組みとして進めてしまうと統制が取れなくなってしまうため注意が必要です。統制を取るためにはガイドラインを策定するのが有効です。加えて、そうしたガイドラインなどを管理する全社横断的なチームを組織することが求められます。

デジタル化を促す仕組みを作る

社員1人ひとりがユーザーになる場合など、影響範囲の広いシステムを構築・刷新する場合には、新たなシステム利用に戸惑い、システム活用の機運を下げてしまわぬよう配慮が必要です。積極的にシステムを活用してもらえるように、システム相談窓口の設置、活用事例報告、情報交換会の開催などを行い、異なる事業部や部門の間でノウハウを共有したり、新システム導入や業務のデジタル化がユーザーにとって価値のある取り組みであることを実感してもらったりすることが大切です。

これはパッケージシステム導入においても重要なことですが、現場にてITを活用しようという動きを高めることは、ノーコード開発ツールなどを用いた業務部門自身の開発を促進するうえで、特に重要となります。

ノーコードなど開発を効率化する技術の活用

開発人材不足を補うと同時に、開発人材を育成する目的で、ノーコード開発ツールなど効率的に開発を進められる技術やツールを積極的に活用しましょう。

ノーコード開発ツールの選定において気をつけたいのは、業種によって求める機能が異なる点です。製造業で導入する場合には、製造業の業務で必要な機能を標準機能として持っていなければ、開発の難易度が上がりますし、場合によっては内製化を断念せざるを得ない可能性もあります。

製造業の業務に役立つ機能の一例としては、開発進捗管理に「ガントチャート」、部品などの構成管理に「ツリーグリッド」、ISO文書管理に「版管理」といった機能を標準搭載しているツールが望ましいでしょう。

ノーコード開発ツールと製造業向けの選定ポイントは以下の記事もご覧ください。

4. システム内製化に役立つツール

ここまで、システム内製化が求められる昨今の背景から、メリット・デメリット、活用のポイントまで簡単に紹介してきました。

ダイキン工業でも、専門知識不要で業務アプリケーションを開発できる製造業向けのノーコード開発ツール「Smart Innovator」と、帳票・ワークフロー・文書管理のアプリケーションを容易に作成できる「SpaceFinder」を開発・提供しており、業務部門でも始められるシステム内製化を支援しています。

IT人材不足が叫ばれる中で、便利なツールを活用しながら、ぜひデジタル化の取り組みをシステム内製化で進めていただければと思います。

 

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