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ノーコード開発とは?製造業におけるツール選定のポイント

公開日:2022年11月30日

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が増加するに伴い、自社のビジネスや業務に必要なアプリケーションを迅速に開発するニーズが高まってきました。そうした中で注目を集めているのがノーコード開発ツールです。ノーコード開発ツールの概要やメリットのほか、ここでは製造業における活用の現状とツール選定のポイントを解説します。

1. ノーコード開発とは?

コーディング不要でアプリケーション開発

「ノーコード開発」とは、プログラミング言語でコーディングすることなくアプリケーションやサービスを開発できるコンセプトです。これを実現する製品は、一般的には「ノーコード開発ツール」または、開発から運用、分析などさまざまな機能を包括した「ノーコード開発プラットフォーム」などと呼ばれています(本稿では、以降「ノーコード開発ツール」として記載)。ノンプログラミングツールと呼ばれることもあります。

ノーコード開発ツールでは、コーディングを行う必要がない代わりに、アプリケーションの画面レイアウト構築、データベースのテーブル設計、画面遷移設計、イベント処理、データ連携などは、マウス操作でメニューを選択して組み合わせながら作り上げていきます。中には、条件分岐や繰り返し処理といったプログラミングの際に生じる考え方や知識を必要とすることもありますが、ソースコードを記述することはありません。そのため、プログラミングの知識のない人でも比較的容易に開発できるのが特徴です。

業務アプリを含む多様なアプリを開発可能

ノーコード開発ツールにはいくつかの種類があります。まずアプリケーションを稼働させる環境としてはオンプレミス、クラウドどちらのツールもあります。オンプレミスのツールでは社内のサーバーにインストールし、ユーザーのデスクトップ用アプリとして、あるいはサーバー上にデプロイするアプリケーションとして利用できます。クラウドの場合は、サービス契約後、Webブラウザで開発画面にアクセスして開発を行い、作成したアプリケーションをそのままWeb上に展開できます。

また、一概にノーコード開発ツールといってもその用途は幅広く、ツールによって構築できるアプリケーションはさまざまなものがあります。企業の業務アプリケーション開発用途だけでなく、Webサイト構築、ECサイト構築用のツールやモバイルアプリケーション用のツール、またより用途に特化したものとしては、Webフォームやチャットボット、複数のアプリケーション間を連携する機能を開発するためのノーコードツールも存在します。

ローコード開発ツールとの違い

ノーコード開発ツールを語る際に、よく同じような意味合いで紹介されるのが「ローコード開発ツール」です。ノーコード開発ではソースコードを一切記述する必要がないのに対し、ローコード開発ツールでは少量のコーディングを行うことを前提とします。

ローコード開発では、ノーコード開発と同様に基本的な構築はGUIベースでパーツを組み合わせて行います。ローコード開発にもいくつか種類が存在しますが、ソースコード生成型の場合は、GUIで作成した内容から大枠のソースコードが自動生成され、あとはカスタマイズを施したい箇所のみ、ソースコードを加筆・修正して構築する形を取ります。つまり、生成されたソースコードの意味を理解して手を入れる必要があるため、開発の難易度としてはノーコード開発ツールのほうが優れています。作りたいシステムの機能や開発者のスキルを考慮して選択するとよいでしょう。

2. ノーコード開発が注目される背景

デジタルトランスフォーメーションに伴うアジリティ

近年、ノーコード開発が注目されている背景には、DXの潮流が大きく関係しています。目まぐるしく変化するビジネス環境に対応するべく、昨今では多くの企業がデジタル技術を用いた業務改革に取り組み、その一環として業務効率化に向けたアプリケーション導入が進んでいます。

しかし、ビジネスの急速な変化の中では、アプリケーションの迅速な開発や必要に応じた改修が必要とされます。そこで、従来のアプリケーションよりも手軽かつ短いリードタイムで開発できるノーコード開発ツールに注目が集まっているのです。

そもそも日本では、諸外国に比べて自社の業務システムを内製開発ではなく外部のシステムインテグレーター(SIer)に委託して開発する傾向が強く見られます。この傾向は現在も続いていますが、DXの文脈でスピード感が重視される今日では、このあり方を一部見直そうとする機運が高まっています。

人材不足への対応

DXへの対応として、社内人材で素早くアプリケーションを開発する機運が高まっていることを先述しましたが、そのためには開発するための人材が必要です。ノーコード開発ツールは、まさにそうした人材不足の課題を解消する上でも役立ちます。

一般的なシステム開発では、外部のSIerか社内の情報システム部門に頼らざるを得ません。しかし、昨今ではIT人材不足の問題も指摘されており、内製開発を目指すにしても、必要な人材を集めることがそもそも難しいという課題があります。

そこで最近では、ITスキルが乏しくてもノーコード開発ツールを導入し、現場の業務部門で開発を行う、いわゆる「市民開発」にてIT人材不足をカバーしようと考える企業が増えてきています。

大手ITベンダー各社も注目

ノーコード開発ツールに注目しているのはユーザー企業だけではありません。ユーザー企業によるノーコード開発に対する期待の高まりを受けて、現在では世界的に有名な大手外資IT事業者の中にもノーコード開発ツールを提供している企業がいくつか見られます。

3. ノーコード開発のメリット

ビジネスニーズにタイムリーに追従

ノーコード開発のメリットは、アプリケーション開発のハードルを下げることで、自社の業務やビジネスに必要なアプリケーションを迅速に構築できることです。市場の変化が激しさを増しており、それに伴う自社の業務の変化にも柔軟に対応できるようになります。

ノーコード開発によるスピード感は新規に何かを構築するという観点だけではありません。手組みで構築された一般的なシステムでは、リリース後の改修や変更は手軽に行うことが難しい一方、ノーコード開発ツールではリリース後の変更も非常に容易に行えます。そのため、第1弾をリリースしたあと、現場の声を取り入れながら素早く反復的にアップデートを繰り返して完成度を高めていくアジャイルな開発手法にも適しています。

ノーコード開発は、別の観点からもアプリケーション開発のスピードアップをもたらします。例えばシステム開発をSIerに依頼するには、予算承認や契約書のやりとりなどで相応の時間を要しますが、その点においても内製化を可能にするノーコード開発は有利に働きます。

開発コスト削減

先ほど、日本企業は海外に比べてSIerに業務アプリケーションの開発を依存する傾向が強いという点を指摘しました。これは開発のスピードが損なわれるだけではなく、開発コストがかさむ大きな要因にもなっていました。

しかし、ノーコード開発ツールによって内製化を促進できれば、これまで外部に依頼していたコストの無駄を削減できます。アプリケーション開発を外部に委託している場合、わずかな変更点でも想定以上の見積もり費用になってしまう例は非常に多く見られます。開発の一部を内製化することは、こうした無駄なコストを削減してシステム投資を最適化する上でも欠かせません。

4. ノーコード開発のデメリット

すべての業務をカバーできない

もちろん、ノーコード開発は万能ではなく、デメリットもあります。ノーコード開発ツールでは、テンプレートや機能のパーツを組み合わせてアプリケーションを構築するため、企業の業務要件のすべてを満たせない可能性が高くなります。そのため、自社の業務をシステム側に無理矢理合わせることで逆に使いづらいシステムになってしまう危険性もあります。

またノーコード開発ツールで実現できない機能に対して、別のアプリケーションや手作業を組み合わせなければならないことで複雑化し、全体を通して思ったほど業務効率化ができていないという結果に陥ることもあります。

画面のデザインやUIなどの面でも自由度には限界があります。用意されたテンプレートを利用することから、細かな調整ができない場合があります。

ガバナンスの問題

業務部門でアプリケーションを開発できるということは、言い換えればシステムを管理すべき情報システム部門の知らないところで開発が行われ、個別最適なシステムが各所に乱立してしまい、ガバナンス面での課題が生じる可能性があります。また、不十分なシステムが見切り発車で利用されれば、業務に支障が生じるばかりか、内部統制上のリスクも高まります。

5. 製造業におけるノーコード開発の活用の現状

製造業の普及もまだこれから

先に触れたように、ノーコード開発ツールではすべての業務をカバーできるとは限りません。そもそもノーコード開発ツールでは、汎用的な業務をカバーする機能パーツを提供しているため、自社独自の業務がある場合、そこには適用しづらいという側面があります。

製造業でも、まだ広く普及しているというわけではありません。もちろん、製造業特有の機能を必要とせず、汎用的なワークフローシステムで構築できるような領域、例えば旅費申請、総務諸届け、稟議起案・承認、業務日報など「ノンコア業務(非コア業務)」にはすでにノーコード開発による仕組みが構築されているところも見られます。

ノーコード開発の活用が期待される領域

もちろん、製造業の各企業の独自性を発揮し、事業にも貢献できる「コア業務」にもノーコード開発を適用して効率化できる領域は多く存在します。

ここでいうコア業務とは、利益に直結するものづくりの本業です。つまり、エンジニアリングチェーンなど企業の競争領域と密接に関わりのある業務を意味し、それを支えるアプリケーションは、DXにおける生命線だと言えます。ただしコア業務は、往々にして「複雑で難易度が高い」「専門的な判断を伴う」「環境変化の影響を受けやすい」ゆえに「定型化しづらい」といった特徴を有します。

そのため、AccessやExcelなどのツールで個々に情報が管理され、メールベースのワークフローで業務が回っている領域が非常に多く残されています。まさにデジタル化が困難だったこのようなコア業務に、ノーコード開発ツールが貢献できます。

ノーコード開発できる業務アプリケーション例

開発予算管理
プロジェクト予算計画の立案から終了まで、決裁状況や予算進捗状況を一元管理し、部門やプロジェクトを横断した予算管理業務を行います。
製品開発プロジェクト管理
製品開発プロセスの標準化、最新情報と進捗のリアルタイム共有でコンカレント開発を実現します。
デザインレビュー管理
デザインレビューに関する全ての情報を一元管理し、効果的かつ効率的な運営で開発手戻り防止、品質の向上を実現します。
部品構成管理
製品特徴に合わせた開発BOMを短期間・低コストで構築できます。部品情報・構成情報・ドキュメントを一元管理します。
製品仕様管理
配合、規格、荷姿などの仕様管理画面を開発することで、原料(原料名、CAS番号、法令、SDSデータなど)/製品/配合/製品規格情報などを一元管理します。
クレーム管理
クレーム対応(発生~初動処置~原因調査~是正処置)の複雑なプロセスを確実・迅速に実施できる環境を構築します。

6. 製造業におけるノーコード開発ツールの選定ポイント

製造業の業務をカバーできているか

製造業のコア業務を効率化するアプリケーションをノーコード開発ツールにて構築する際、ツールの選定ポイントは、当然ながら製造業ならではの業務に対応できるかという点です。

AccessやExcelなどのツールで管理していた業務をノーコード開発できるツールは世の中に多く存在しますが、製造業ならではのデータの持ち方や処理の流れなどに対応できるものは多くありません。これに標準対応できるツールを選定することで導入後のミスマッチを減らし、システムに業務を無理やり合わせるような事態も回避できます。

次項から、製造業のコア業務をアプリケーション化する際に、特に重要になる機能を例示します。

業務間自動連携
製造業では部門から部門、担当から担当へと業務が引き継がれて進みます。また一つの業務から複数の業務が派生するため、それらの業務帳票が連動して更新される機能が求められます。
高度な検索機能
設計情報、部品情報、不具合対応の履歴などをはじめ、製造業では過去の情報を探して参照するという業務に多くの時間を割いているため、使いやすい検索機能は不可欠です。登録情報をすべて検索できるだけでなく、細かい検索条件の設定や関連語登録などプラスアルファの機能も備えていると便利です。
バージョン管理・有効期限管理
製造業では、多くの企業がISO9000シリーズに基づいた業務を遂行しています。そこで求められる重要な要素が適切な文書管理です。ISO9001規格に準拠した文書管理において、文書の改訂履歴を記録するとともに、改訂期限や改訂要否を一覧化し、定期的な見直し・改訂をサポートする機能が役立ちます。
ツリー形式の階層構造によるデータ管理
製品構成をユニットや部品単位で管理する部品表を構築する場合、データをツリー形式の階層構造で管理する機能が求められます。
ダッシュボード
蓄積した情報を集計してさまざまな形式のグラフに可視化できる機能です。集計結果からドリルダウンして詳細情報を確認することもできます。もちろん、データ可視化の重要性は製造業に限ったものではありませんが、品質管理業務の一環として不具合・トラブル、不良品情報などの把握に務める製造業では、可視化機能は特にニーズの高い機能です。
改善効果モニタリング機能
デジタル化した業務に関して、蓄積した情報とあらかじめ設定したKPI目標をもとに、達成状況をモニタリングできる機能です。カイゼンの取り組みを行う企業が多い製造業に適した機能です。

ツリー形式の階層構造によるデータ管理の例(部品表)

ノーコード開発とは-図01

7. まとめ

いまやデジタル技術を用いた業務効率化、業務改革は不可欠ですが、SIerなど外部の企業やITの専門人材のみに依存したシステム開発では、現場のニーズに追従できるシステム開発をリーズナブルなコストで迅速に行っていくことは困難です。そこで業務を熟知した現場の担当者による「市民開発」によって業務を改善していくあり方が、DX時代のアプリケーション開発の姿として重要な選択肢の1つとなります。

製造業としてものづくりを手がけるダイキン工業では、製造業の市民開発を支援するソリューションとして、さまざまなアプリケーション開発および集計・構成管理を実現する「Smart Innovator」と、帳票・ワークフロー・文書管理のアプリケーションを容易に作成できる「SpaceFinder」の2つのノーコード開発ツールを独自に開発し、提供しています。

SpaceFinderは1999年の発売以来、ダイキン工業はもちろん国内700社以上のものづくりの現場で活用され、コア業務の効率化や品質向上を支えてきました。電子部品、電機・機械、自動車、化学、食品、日用品など、さまざまな製造業の有名企業が、業務改革の高度化を実現しています。

日本ではDXの遅れを指摘する声もありますが、先進企業は着実に歩みを進めています。製造業の業務に特化したノーコード開発ツールを活用しながら、時代の変化を乗り越えていただきたいと思います。

 

製品情報

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